017【Specialist Column】by尾崎冨美 「そのシミやホクロは大丈夫?病院主催のセミナーで地域に呼びかけ」

もうすっかり秋となりましたが、日頃の日焼け・紫外線対策は万全ですか?

夏の紫外線ダメージで、気がつくと顔や体中に見覚えの無いシミやそばかす、そしてホクロが・・・と鏡の前でため息をつく方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以前、私の事務所の近くにあるProvidence Little Company of Mary 病院 主催の無料セミナーが行われ、行ってきました。アメリカの病院では定期的に医師を迎えて、地域へのサービスの一環として無料セミナーが行われています。今回のセミナーは、同病院専属の皮膚科医ステファニー・チャン女医を講師として迎え、The sun and your skin—the good, the bad, and the ugly(太陽と肌~良い、悪い、醜い)と題し、1時間半に及ぶ判りやすいレクチャーに、一般の人々も耳を傾けていました。





私も日頃からお越しいただいているお客様から、時折ホクロ除去や慢性ニキビの処方などの相談をうけ、皮膚科をご紹介することがあります。常に医療の目線からの情報収集には欠かさないよう、今回のセミナー参加に至りました。皮膚科医とエステティシャンが共存するメディスパ(Medical Spa)もアメリカでは珍しくありませんが、美容や医療の垣根を越えて、即効性を高く求められる時代となった昨今、皮膚科医との繋がりを大切にするように心掛けています。

セミナーが始まる30分前には、看護師数名のボランティアによる肌診断測定器DermaScanを体験することができました。この測定器はブラックライトにより肉眼では見えない、紫外線による肌ダメージがくっきりと映し出されるドッキリな機械ですが、これを機に、少しでも地域の人々が紫外線対策や皮膚ガン予防について感心をもっていただくことが狙い。病院側も地域住民との情報共有化に力が入ります。
セミナーを受けたころは世界中何処へいても強い日差しやシミ、ソバカスが気になる季節で、日焼け止めの売上げも上昇する時期でした。
そして誰もが知っておきたい、日焼け対策と皮膚ガンについて。
この時期、アメリカ人圏が最も気になる病気の第1位は「皮膚ガン」といわれています。American Academy of Dermatology(米国皮膚病学会)によりますと、アメリカ国内だけで毎年 2 億人以上が皮膚ガンを発症、1時間に1人はメラノーマ(悪性黒色腫)で死亡しているという恐ろしいデータもあります。

チャン先生のセミナー冒頭では、肌の構造の説明、太陽が及ぼす肌への影響(こちらのエステ学校では、長年トラック運転手をしている男性の写真を例として取り上げるのが有名で、その写真はこちらをクリックしてご覧ください)、続いて3種類の皮膚ガンについての詳しい説明がありました。
発症率が最も多いのが基底細胞ガン(Basil Cell Carcinoma)。アメリカでは1億人が発症、発症率は年々上昇。細胞そのものは低悪性な為、進行性はゆっくり。普段太陽の近くで過ごさないのに、いきなり日差しの強い国や地域へ行き、肌を焼いてしまった人などが発症しやすいと言われています。
続いて有棘細胞ガン(Squamous Cell Carcinoma)。基底細胞ガンとは異なって明らかに目に見えて、色白で太陽の当たりが多い人に発症しやすいと言われています。太陽に当たる確率が高い下唇をはじめ、頭皮、耳、鼻や指などに発症する場合も有ります。
最後に悪性黒色腫 (Malignant Melanoma)。生体組織検査 (Biopsy) をしただけでは取りきれない腫瘍。悪性黒色腫を発症した人は半年から1年の間に検診を行うことを勧めています。発症した人は3年間で40%の確率で再発する可能性大。発症率が高い年齢はなんと25~29歳で75%。若年層の日焼けサロン経験者が影響を及ぼしているとも言われています。
皮膚ガンは何故できる?答えは個人差がありますが、基本的には我々の身体による細胞の宝庫であるDNAのコントロールが、外気や環境により乱れるためではないかとも言われています。つまり免疫力を日頃から低下しないよう、適度な運動と栄養バランスをはじめ、日中の午前10時から午後3時は日差しを避けることや帽子、サングラス、長袖、長ズボンなどを着用するなどから、生活の質(quality of life)を高める努力を日頃から心掛けるのが大切なのだと、改めて実感しました。

そして、皮膚ガンを発症してしまったらどうする?最近では放射線治療以外に、処方箋の優れたクリームやジェルタイプの軟膏で治す方法もあるようです。症状によって異なりますが、気になる方は先ず皮膚科へ相談してみることをお勧めします。
チャン先生曰く、35歳までは新しいホクロはできても、40歳を過ぎたらホクロはなるべく作ってはならないとの事。セミナーは引き続き、日焼け止め表示SPF(Sun Protective Factor)についての見分け方やアメリカでの日焼け止め表示Broad Spectrumについての説明がありました。アメリカでは2012年よりSPF15以上の日焼け関連商品についてはBroad Spectrumとの表示が義務付けられています。これにより正しく認可、表示されている商品が肌の老化や皮膚ガンのリスクを軽減することを謳うことができるのです。

皮膚ガンは早期発見が鍵。この時期だからこそ、全身のセルフチェックも含め、気になるホクロやシミに気がついたら、早急に皮膚科で診てもらうようにしましょう。